ビジネスの交渉

ビジネスの経験があれば、投資家のオフィスを初めて訪ねるときに多少気が楽になるかもしれないが、その程度の効き目しかない。実力と自信は、過去の経験からくるものではない。むしろ、関係者全員が利益を共有しあえるような堅実な取引をまとめるなかで生まれるものだ。毎月の収入を最大化し、資産価値を上昇させるような現実的な購入価格を決定するという最終目標に向けて、どのように不動産物件を探したらよいか、どのように評価をすればよいかについて説明していく。そのような取引を見つければ、誰もが参加しようとするだろう。

長年の取引のひとつに、アリゾナ州グランデールに建っている総戸数205戸のビルがあった。1年ほど前の売主の希望価格は7,900,000ドルで、不動産ブローカーは私に、他からも引き合いがきていて最高提示額は7,200,000ドルだと告げた。物件について下調べをしたが、私は、運営状況からして7,200,000ドルがいいところだろうと値踏みした。売主は申し込みをすベて断り、物件を引っ込めてしまった。6か月後、売主は同じビルを今度は8,100,000ドルで売りに出した。もしその物件に未練があったら、私は、運営状況に基づいてまたオファーを出したことだろう。前にオファーを出したときと同じ7,200,000ドルになったはずだ。たぶん売主は、運営状況を見てオファーを出した他の人たちもろとも私を放り出すだろう。彼がいまだにそのビルを所有していると知ったら、あなたは驚くだろうか。

この方法を使えば、売主が出した売却希望価格が無意味なものであることがあなたにもわかるだろう。その数字をもとに交渉しでも何にもならないし、そんなことをすれば災いのもとだ。なぜなら、売却希望価格はたいてい、その物件にどれほどの価値があるかについての売主の意見だからだ。物件の運営の実態に根ざしたものではない。ほとんどの人が交渉の場だと思っているミーテイングは、私にとっては、もっと正確に言えばプレゼンテーションの場だ。私はそこで数字を提示するし、条件を飲むか飲まないかの決断をすることがかなり多い。私が追い出しを食ったときは、たいていは数字が折り合わずに物別れに終わったというのが本当のところだ。取引を見送るのは良いことだ。